大判例

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東京高等裁判所 平成12年(ネ)2725号 判決

主文

一  原判決を取り消す。

二  本件訴えを却下する。

三  訴訟費用は、第一、二審とも控訴人の負担とする。

事実及び理由

第一  控訴の趣旨

一  原判決を取り消す。

二  東京家庭裁判所平成五年(家イ)第五九二号夫婦関係調整事件において平成五年一〇月一三日に成立した調停(以下「本件調停」という。)の調停条項第五項(以下「本件条項」という。)が無効であることを確認する。

三  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

第二  事案の概要

一  控訴人は、被控訴人との間で成立した本件調停のうち、当事者間の債権債務の清算に関する本件条項につき、被控訴人の詐欺を理由に取り消したとして、無効であることの確認を求めた。右請求を棄却した原判決を不服として控訴人から提起されたのが本件控訴である。

二  争いのない事実等、当事者双方の主張及び主たる争点は、原判決の「第二 事案の概要」記載のとおりであるから、これを引用する。

第三  裁判所の判断

一  本件訴えの適法性について検討する。

前記争いのない事実によれば、控訴人と被控訴人は、平成五年一〇月一三日に東京家庭裁判所において成立した本件調停により離婚したものであるが、控訴人の本訴請求は、本件調停のうち、第五項、すなわち、「当事者双方は、本件離婚に関する紛争は一切解決したものとし、今後は相互に名義の如何を問わず何ら金銭その他の請求をしない。」との条項(本件条項)のみの無効確認を求めるものである。

そして、控訴人の主張によれば、その無効原因としては、本件調停の各調停期日において、被控訴人は控訴人からの要求に対し、自己の財産関係について虚偽の事実を回答して本件調停を成立させたものであることが判明したので、平成九年一〇月二〇日ころ、詐欺を理由として本件調停の合意における控訴人の意思表示を取り消したというものであり、本訴請求の確認の利益としては、右同日に控訴人が被控訴人を相手方として東京家庭裁判所に申し立てた財産分与請求の調停事件(以下「別件調停事件」という。)において調停をするため必要であるというものである。

二  一般に、調停の合意における意思表示に詐欺や錯誤等を理由とする瑕疵があるときは、確認の利益があるかぎり、右調停の無効確認を請求することができる。しかし、本訴請求は本件調停全体の無効確認を求めるのではなく、その後に控訴人が申し立てた別件調停事件において財産分与の請求をするために、本件調停のうちの離婚及び親権者の指定等に関する合意は有効に成立したものとして、これを維持したまま、いわゆる清算条項である本件条項のみの無効確認を求めるものである。

複数の調停条項のうち、特定の権利義務を定めた条項だけを取り上げて、請求異議の訴え等によりその債務名義の効力を争い、あるいは、当該条項に基づく特定の権利義務を負わないことの確認を求めることも場合により許されないではないが、本件条項は、いわゆる清算条項であって、特定の権利義務を定めたものではなく、したがって、本件条項のみの無効を確認しても、これによって、当事者間の特定の権利義務の存否や法律関係が確定するものではないから、特段の事情がないかぎり確認の利益はないものといわなければならない。

控訴人は、特段の事情として、別件調停事件において、被控訴人に対し、改めて離婚に伴う財産分与について調停をするためには、本件条項の無効を確認する利益があると主張するが、本件条項があったとしても、当事者間において新たな合意をすることは自由であり、したがって、それだけでは本件条項の無効を確認する利益があるとはいえない。また、別件調停事件において新たな合意が成立しない場合には、控訴人の財産分与請求権は、離婚の時から二年を経過しているのであるから、本件条項の有効無効にかかわらず、消滅している(民法七六八条二項但し書き)ため、審判手続きにおいてその請求権を主張することはできず、したがって、その場合においても、確認の利益がないことは明らかである。

以上によれば、控訴人の本件訴えは、いずれにしても確認の利益に欠けるといわなければならない。

三  そうすると、控訴人の本件訴えは不適法であるから却下すべきであり、本件請求を棄却した原判決は相当でないから取り消すこととし、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 奥山興悦 裁判官 山﨑まさよ 裁判官 沼田寛)

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